書評:「20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ」

今日は、@HAL_Jさんの著書「20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ」に関して、僕の実経験を交えて話そうと思います。


僕が日本にいた頃、一時期友人達に英語を教えていた事がありました。僕は第一言語として英語を身に着けたので、第二言語としての英語の教え方がどうも分からなかったのですが、その間に日本の20代の方達がどのように英語と接しているかを知ることが出来ました。


HAL_Jさんは結構ハードルの高いことを提唱していると思います。けど逆に言えば、そのくらいする覚悟が無いと実用的な英語は身につけれないということではないでしょうか。


「なぜ英語を学ぶのか」の問いに明確な目的意識を持って答えれる人ならば、本書は大きなリソースになります。「自分の英語のこの弱点を補完したい」と思ったら、明確な取り組みを見つけることが出来ます。英会話学校に大金を払うよりよっぽどリターンが大きいと思います。しかし、「手っ取り早く英語を使いたい」と考える人には全く持って向かない本だと思います。


  1. 小・中学校時代に僕が実際使った手法
  2. 第二言語としての英語という考え方
  3. 「なぜ英語を学ぶのか」


小・中学校時代に僕が実際使った手法

この本の中に、「Phonics」、「語源」、「英語の文章の構造」という三つの学習のポイントが挙げられています。僕は文法・文章構成に強い私立校に通っていたのですが、今考えるとこれら三つは基礎の部分を造るためには必要不可欠でした。「Phonics」は発音の基礎、「語源」は単語の意味の基礎、そして「英語の文章の構造」は文章構成による意思疎通の基礎に当たります。学習のハードルは高いですが、リターンは大きいと思います。


まずPhonicsですが、幼稚園のころからチャートを使って毎日クラスみんなで音読していたのを覚えています。「KR」や「SL」、「CR」の発音をみっちりと叩き込まれ、小学6年の1年間は「Eigh」、「Ough」、「EI」、「OO」などの様々な複雑な子音(なのかな?)の種類と発音を毎週復習していました。この基礎があってこそ、新しい単語でも問題無く発音出来るのだなあと思わされます。


次に語源ですが、これは小学校4年生の頃から始まり、中学1・2年で本格化しました。学習法は基本的には語源と語源を用いる単語の暗記だったと思います。一般的な英単語の学習でもそうですが、丸暗記をしなければならないシチュエーションはやっぱり多いですね。当時の僕のノートが部屋にあったので、載せてみました。これのお陰で知らない単語でも文脈と語源から大体の意味が分かることが多いです。



中学2年のノート。字が汚いですね(笑)。


最後に文章構成ですが、HAL_Jさんの挙げているのは基本的な「5 Paragraph Essay」と呼ばれるもので、僕は小学校高学年の頃に学んだと思います。より柔軟な表現や文章の流れが欲しい場合はあえて使わない場合もありますが、正に文章構成の根源と言える考え方です。余談ですが、SAT、GRE、GMATといった試験の文章構成は「5 Paragraph Essay」が必須です(予備校でも教わります)。


第二言語としての英語という考え方

僕の経験では、日本の方はそれなりに英語が出来る人でも英語を使うことに非常に消極的だと感じました。知識はそれなりにあるのに、なぜこうも苦手意識を持つのだろうかと不思議に思ったものです。HAL_Jさんの言うように、彼らは「完璧な英語」を使おうとしていたのではないかと思います。完璧に話そうとして、その結果言葉が詰まり、フリーズしてしまう…そんな光景が浮かびます。


僕もHAL_Jさんと同じ意見で、英語で意思疎通を問題無く行えるレベルまで持っていく必要はあっても、完璧な英語を身につける必要は無いと思います。僕の身近での最たる例が僕の父です。僕の父は渡米してから30年余りの間、シリコンバレーのビジネスマンでした。それも日系企業ではなく、米国企業やベンチャーの中でです。そんな父ですが、未だに発音は70点程度ですし、細かい文法の間違いは多いです。英語が完璧でなくとも、個人としてのスキルと実績があればまともな欧米人は東洋人をリスペクトし、頼りにします。英語の表面的な部分は、根本的な知識、人脈、ネゴシエーション力などの力の妨げにさえならなければ問題無いわけです。


僕が大学生だったころ、学年でただ一人、帰国子女でも日系2世でもない生粋の日本人の留学生がいました。彼の英語は片言でとてもつたないものでしたが、笑顔と前向きな姿勢、そして誰よりも努力することで周りの信頼と尊敬を集めました。理系の学生、特に工学部では「いつも笑顔で、異常なくらい勉強している奴」として、彼の存在を知らない者はいないくらいでした。彼の素晴らしさは、表面的にたどたどしい英語くらいでは蓋は出来なかったわけです。



「なぜ英語を学ぶのか」

英語を学ぶ理由は様々です。最も大きなわけ方は、(1)実際に実用的に英語を使うため、と(2)試験のため、に分かれるのではないでしょうか。僕は日本の友人と英語学習について話すときは必ずこの「何のために」を重視します。昇格の必要条件だから英語を学習するのなら、その点数を取るための勉強に特化するべきですし、それ以上の勉強はその人にとって「時間の無駄」な訳です。理由がハッキリしているのならば、昇格のためだけに英語を勉強するのは別に悪いことでは無いと思います。


反面、「学会で他の参加者と意見交換するため」や、「赴任先で現地採用の人と円滑に仕事をしたい」などの理由の場合は実際に英語の「話す」「聞く」「書く」「読む」を全て行う必要があります。誤魔化しはその人自身の損失になるので、きちんと基礎から英語を築きあげる意義もあります。そのような方の場合はHAL_Jさんが説く学習法の数々を試してみる価値は多いにあると思います。


僕個人の意見としては、ここ最近の日本国内の行き詰まり感は日本人の選択肢の無さに起因していると思っています。この先の若い世代の方にとって、英語を負い目に感じずに世界へと足を向けれるようになることがこの現状を打破するための最重要課題の一つだと感じています。





英語を学ぼうとする人達にとって、ありきたりな「How To」ではなく、具体的な「What To Do」を緻密に説明してくれるこの本は貴重はリソースになると思います。